観測原理

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空気シャワー現象

宇宙線原子核が地球に到来し大気圏に入ると、大気中の分子と相互作用して 様々な種類の素粒子を作ります。これらのうち中性パイオン (パイ粒子) は 直ちに 2 つのガンマ線に崩壊します。ガンマ線は大気中で電子対生成を起こして 2 つの電子に変わり、更に電子は制動放射でガンマ線を放射します。これらを 繰り返すことによって、初めは 1 個の宇宙線だったものが、多くの電子、 ガンマ線、その他の粒子の群れに変わってシャワーの様に地上に降り注ぎます。 この現象は空気シャワー現象と呼ばれています。

空気シャワー

空気シャワー現象 (Credit: M. S. Longair, High energy astrophysics)

空気シャワーアレイ

超高エネルギー宇宙線の観測方法は目的に応じて様々ですが、 knee 領域 (10 の 15 乗 (= 1000 兆) 電子ボルト付近) の宇宙線観測には空気シャワーアレイ という装置が用いられます。空気シャワーアレイは粒子検出器を地上にほぼ一定 の間隔で配置したもので、これらを用いて空気シャワー中の電子等の粒子を 検出します。空気シャワー粒子はほぼ光速で、平面状の集団になって地上に 降り注ぎます。従って、各検出器に空気シャワー粒子が到着した時刻の差を 用いて、空気シャワーの親の宇宙線の到来方向を推定出来ます。
空気シャワーアレイ

空気シャワーアレイ (Credit: M. S. Longair, High energy astrophysics)

また、親の宇宙線のエネルギーが高い程、多くの空気シャワー粒子が地上に 到着するため、空気シャワーアレイで検出した粒子の総数から親の宇宙線の エネルギーを推定することが出来ます。

宇宙線の観測に空気シャワーを利用する場合、宇宙線が大気中で多くの素粒子に 分かれてしまうため、元の宇宙線が何だったのかを推定することが難しく なります。しかし、空気シャワー粒子は地上に広がって到着するため、この性質 を利用すると宇宙線を検出できる面積 (検出面積) が格段に大きくなります。 宇宙線のエネルギースペクトルからわかる ように、宇宙線のフラックスはエネルギーが高くなると急激に減少します。 従って、空気シャワーアレイの検出面積が大きいことは、超高エネルギー宇宙線 を観測する上でとても大事な長所です。

ミューオン成分

宇宙線が原子核の場合、空気シャワーの初期の段階でパイオンが作られます。 このうち荷電パイオンは、ミューオン (ミュー粒子) とニュートリノに 崩壊します。生成されたミューオンのうちエネルギーの高いものは、 相対論的効果で寿命が伸びるため地上まで到達します。宇宙線原子核の質量数が 大きい程多くのミューオンが生成されるため、地上で空気シャワー中の ミューオンの個数を測定すると親の宇宙線原子核の種類を推定出来ます。

一方、ガンマ線が大気中に入射した場合、ごくわずかな確率でパイオンが出来る 場合を除いて、電子とガンマ線のみの空気シャワー (電磁カスケード) が 発達します。つまり、親がガンマ線の空気シャワーのほとんどはミューオンを 含みません。ガンマ線観測において、他の宇宙線原子核による空気シャワーは ノイズになりますが、ミューオンを含まない空気シャワーを選ぶことによって、 ノイズをある程度取り除くことが可能です。
超高エネルギー宇宙粒子物理学研究室 - Ooty 空気シャワー実験

Last modified: Tue Feb 11 05:57:14 2003